ヱホバは全世界を遍く見そなはし 己にむかひて心を全うする者のために力を顕したまふ   歴代史略下16:9


ダビデより数えて4代目の南王国ユダのアサ王、その41年の治世が歴代史略下14~16章に記されている。

アサの治世の始めの10年は神が安息を賜うて平安であった。王は国中の偶像を取り除き、民に命じて主なる神を求めさせた。その一方で街を建て、石垣を築いて強固にし外敵に備えた。

アサは民に言った。
「我らの神ヱホバを求めしに因りて此の國なほ我らの前にあり 我ら彼を求めたれば四方において我らに平安を賜へり」と。 14:7

時に国難が襲った。エチオピア人ゼラが100万の軍勢、300両の戦車を率いて攻めてきた。迎えるアサの軍勢は、ユダ30万、ベニヤミン28万であった。みな盾を取り弓を弾く大勇士であったが、敵の半数に満たなかった。

アサは神に向って呼ばわった。
「ヱホバよ力ある者を助くるも力なき者を助くるも汝においては異なることは無し 我らの神ヱホバよ我らを助けたまへ 我らは汝に倚り頼み汝の名に託りて 往きて此群衆に敵(あた)る ヱホバよ汝は我らの神にましませり 人をして汝に勝せたまふ勿れと」 14:11

斯くて神はアサの前とユダの前にエチオピア人を撃ち破られたので、彼らは敗走し、ユダは多くの分捕りものを得てエルサレムに帰還したのだった。

ここに預言者オデデの子アザリヤが出迎えて言った
「汝等がヱホバと偕にをる間はヱホバも汝らと偕に在すべし 汝ら若しかれを求めなば彼に遇ん 然れどかれを棄てなば彼も汝らを棄てたまはん・・・然ば汝ら強かれよ 汝らの手を弱くする勿れ 汝らの行為には賞賜(むくいのたまもの)あるべければなり」と  15:1~7参照

アサ王とユダ、ベニヤミンの人々は一つとなってその言葉に從ったので、北王国イスラエルの人々の中で、神がアサと偕に在すを見てアサに降る者が夥しかった。

王と民は契約を結び、心を尽し精神を尽して先祖の神ヱホバを求めたので、神は四方において之に安息をたまい、治世の35年まで続いたのである。

だが、彼の栄えたのはそこまでであった。

36年に北王国イスラエルの王バアシャが攻め寄せて来た時、アサは神に呼び求める事をせず、反ってスリヤの王ベネハダテに倚り頼み、これに神殿の宝物を贈って、イスラエルとの約を絶ち、ユダの味方となるように願い、結果として勝利を収めたのだった。

だが、先見者ハナニがこれを聞き、アサの許に来て預言して言った
「汝はスリヤの王に倚り頼み、神に倚り頼まぬゆえに、スリヤの軍勢は汝の手を脱せり。かの
エチオピア人の大軍と戦車が来た時は神に倚り頼んだため、神は彼をアサの手に渡しにあらずや。ヱホバは全世界を遍く見そなはし己にむかひて心を全うする者のために力を顕したもふ この事においてえ汝は愚かな事をなせり 故に此後は汝に戦争あるべし」と。 16:7~9

アサは、治世の前半は純粋な信仰を持っていて祝福されたが、後半は、神を畏れる事を棄て、人に倚り頼る凡愚な王となり、祝福を失ってしまった。 何故か? いまだ御霊なき時代の故に確たる助け主を持たぬ為とは思うなれど、今日の私たちにとっても全き信仰を持つべきを教える教訓と受け止める必要があると思う。